M この日は午前中に小倉地区を歩き、午後から滝畑地区というスケジュールでした。小倉地区めぐりの終盤は、すでに力尽きていました。民家のドアを開けたら自宅の寝室につながっていないかなーとか妄想しながら歩いていました。
髙崎 あんなの普段通りの行程ですよ。民家に入ったら不法侵入で通報されますし、そもそもどこでもドアを使ったら、ちかばめぐりの意味がありません。そんな意識の低さでは、ちかばめぐらーの称号を授けることはできません。
M 称号だったんすか? 別にいりませんし、なんかどこでもドアがある体で話されていますが、そもそもありませんよ。
髙崎 だらだら話していても進まないので、そろそろ本題に入りましょう。滝畑地区は昔ながらの佇まいの家が多く、田舎らしい原風景が広がるエリア。滝畑地区は大阪府との境界に近い集落です。
M 滝畑を訪れたのは初めてだったのですが、空気が澄んでいて、のどかな雰囲気が漂っていました。滝畑地区は県道7号線(粉河加太線)から県道64号線(和歌山貝塚線)を車でひたすら北上し、山間のカーブをくねくねっと力強く上がって下りて、西に入った先にあります。詳しくは地図を見るか、検索してください。
髙崎 今回の目的地「春日神社」には、民家が立ち並ぶ場所を基点に、細い山道を西に10分あまり歩くとたどり着きます。この日は地元の方にお話をうかがいながらめぐりました。
※下記は地元の方のお話と資料を参考にまとめたものです。※諸説あります。
春日神社は、熊野古道中山王子社が合祀されている由緒ある神社です。社の奥には小さな滝があるのですが、この滝が日本全国にある「音無しの滝」の発祥といわれている説もあるそうです。
江戸時代後期に発刊された『紀伊国名所図会』には、
「音なしの瀧 滝畑村南の方三町餘にあり、水源は雄の山より出でて滾々たる谷川なり。(中略)清少納言 枕草紙にたきは音なしの瀧」とあり、清少納言が記した『枕草子』に記載のある音無しの滝は、滝畑の滝であるという説明があるそうです。
滝の上の岩場には凡字が刻まれており、ここで役行者が修行していると伝えられています。
滝の上のお堂は、行者にまつわるものとのことで、ご神堂のある滝は珍しいそうです。今でも修験者の方々がこちらに巡拝にこられる場所で、地元の方々も修験者の方たちと交流があるそうです。
M 小さいけれど、凛として濃密な空気に包まれた神社でしたね。
髙崎 小さい祠ではありますが、後ろの瀧や祠の前に作られた引き戸など、厳かな雰囲気のある場所でした。
M 神社からの帰り道には廃校にも立ち寄りました。地元の方に当時のお話をうかがい、昔の人たちの生活に思いを馳せました。山道を開拓し、生活のために作物を栽培し、人の力で運んだそうです。昔の人たちは強靭でした。ちかばめぐりの良さのひとつに、考察の楽しさがあるように思いました。
髙崎 その場所や周りの雰囲気から、「ここはどんなところだったのかな?」と当時を思うだけでも面白いものがありますが、今回のように地元の人にお話をうかがうことで想像の輪郭が次第にはっきりしてきます。
これは近場に限ったことではありませんが、知っているつもりだった場所や、長年通っている場所でも実は地元の人に話を聞いてみると思わぬ発見があって、新鮮さを感じたりします。それがちかばめぐりの面白さだと思います。
地域には春になると見事な桜が咲くそうです。かなり大きく立派な桜の木のようですので、原風景に咲く桜を見に訪れたいです。
(次回は2023年3月7日(火)午前11時より公開します)