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ヴィ―ガン料理専門店『Leaves of grass KIMINO』オーナーシェフ・大平哲雄さんインタビュー/第2回

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ヴィ―ガン料理のスペシャリストとして全国で名を馳せる大平哲雄さんは、20214月に生まれ育った東京を離れ、家族と共に和歌山に移住。オーナーシェフとして『The plant based(ザ・プラントベース)』(岩出市)、『Leaves of grass KIMINO(リーブス・オブ・グラス・キミノ)』(紀美野町)を開店。そして20247月には和歌山市狐島にスイーツ専門店『The plant based DOLCE(ザ・プラントベースドルチェ)』をオープンする。そんな大平さんにこれまでの歩みと新店舗についてお話をうかがった。


>>前回のエピソードはこちらから

https://www.agasus.com/articles/person006-1/

 

コロナ禍により浮上した和歌山での事業展開

目線の先には、紀美野の豊かな自然が広がる

大平さんは当時を振り返る。

201910月頃は『新型コロナウイルス感染症が海外で発生したよ』というくらいの認識で、まだみんな半信半疑でした。でも僕はその一報を聞き、背筋が凍りました。もう本当に冷や汗が流れて、今後世の中は大変なことになるのではという感覚がありました」。

大平さんはこのタイミングですぐに行動に移した。東京で取り組んでいた事業を売却し、一気に事業規模を縮小。その資金でECサイト事業をスタートさせた。国内で新型コロナウイルス感染症の感染者が初めて出た数カ月も前の話だ。

「でも唯一、契約の関係で東京のベンチャー企業とのコラボは中止できず、20206月、誰一人歩いていないロックダウン下の渋谷に店をオープンしました。料理のデリバリーシステムを構築し、テイクアウトメニューに特化したことにより想像以上に反響がありました。今思えば、そういうものの先駆けだったと思います」。

同年10月、大平さんの人生のターニングポイントとなる出来事があった。現在「Leaves of grass KIMINO」が建っている土地の所有者、グリーンコーディネーションフズ(本社:大阪)の峰岸代表との出会いだ。共通の知人を介して知り合った大平さんは、峰岸代表が有効活用を模索しているという紀美野の土地を視察することになった。

「和歌山県を訪れるのは初めてだったので、いろいろ調べました。紀美野町には人気のあるカフェやレストラン、パン屋さんが多いですし、同町が移住定住や起業を積極的にサポートしてくれると知りました。実際に来てみると自然が素晴らしいし、近畿圏からの観光客も多い。とても魅力的なエリアに感じました」。

大平さんは視察したその日のうちに「紀美野で店をやります」と峰岸代表に即答。共同でレストラン事業を進めることになった。

3カ月後には家族全員を紀美野に連れて来て『ここで暮らしていくけど、どう?』と伝えると、豊かな自然が気に入って家族全員が大喜び。妻も『絶対、移住する』といってくれました。それから3カ月後の20214月、子どもが小学校入学するタイミングで完全移住しました」。

とにかく、おいしく。ヴィ―ガン料理への思い

ヴィ―ガン料理専門店「Leaves of grass KIMINO」を紀美野町三尾川に開業したのは202249日。移住した2021年中にオープンする予定だったが、コロナ禍の影響による資材不足などが重なったのが延期の原因だった。この期間を利用して、後に本店となる『The plant based』を岩出市内にオープン。ヴィ―ガン食品や観葉植物などの販売やヴィ―ガンカフェも併設した事務所兼ショップは、市場を見極めるトライアルの意味合いもあったが、予想以上の反響があり、そのまま店舗化した。

自然と融合した上質な空間で、厳選された旬の素材で作られる野菜料理が楽しめるとあって、「Leaves of grass KIMINO」はオープンして2年経った今も好評を博している。大平さんが初めて紀美野町を訪れた際の読みが的中したのだが、誰もがヴィ―ガン料理を求めに来店しているかというと少し違うようだ。

「実はここが一番のキモで、東京では料理単体の評価よりも内装やサービスを評価されがちですが、関西のお客様は料理への理解が高く、こちらに来た方が評価してくれると思っていました。それもその通りでした。『野菜の味がする』『こんなに野菜の味引き出すんだね』など、うれしい評価をいただいています。よく、ご年配の方々は『昔のトマトはおいしかった』といいますが、それに近い感じです。

おそらくほとんどの人がヴィ―ガン料理だとわからずに来店くださっていると思います。でも料理がおいしくて雰囲気も接客も良いからお越しくださるというのが僕たちにとって正解で、それがヴィ―ガンやSDGsに貢献するというのは後の話。そういった意味でもとても良かったです」。

大平さんが帰国当時に感じたのは、ヴィ―ガン料理がおいしくないということ。今、東京で約120店舗もの専門店があるが、当時からあまり魅力を感じなかったと評する。

「お客様が期待するのは、当然ですが料理のおいしさです。でもこの業界で最も大事にされているのはヴィ―ガンの思想――環境問題の解決であり、動物愛護などです。したがって味は置き去りにされています。でもそれだと絶対に広がりません。だって飲食店ですからおいしくなければ意味がない。当時僕がこのような提唱をしたところ、業界は大反対でした。

その中でおいしいヴィ―ガン料理の調理方法を模索したのですが、肉や魚の料理方法をそのまま野菜に置き換えているだけで、特別な技術ではありません。代替した野菜をどのように加工、調理すればおいしくなるか。長年培った技術と地道な研究、創意工夫が全てです。このロジックが企業に受け入れられ、今では商品開発も多数手掛けています」。

大平さんが調理をする上で大切にしていることは2つ。野菜の旨味を引き出すことと、野菜のそのものの味を引き出すこと。これらを織りなすことで「野菜ってこんなにおいしかったのか!」「野菜の味わいとは思えないおいしさ!」という2つの感動をお客さんにもたらすことができるという。

「野菜や穀物だから表現できる料理、野菜でなければ作ることのできない想像領域があります。今、世界は野菜や穀物中心の食生活に急速に移行しています。和歌山で新しくスタンダードとなっていく料理をわかちあえる喜びを感じています」。

(最終回は2024年7月下旬に更新予定です)


The plant based
(ザ・プラントベース)
岩出市野上野15-3
tel.05088830268

https://www.theplantbased.info/


Leaves of grass KIMINO(リーブス・オブ・グラス・キミノ)
紀美野町三尾川898-1
tel.0734953031(店頭)、05017208264(予約)

https://www.leaves-of-grass-kimino.com/


※営業時間など直近の情報は各店舗のInstagramをご確認ください