和歌山県高等学校学校図書館研究会に所属する高校・特別支援学校の学校司書が1年間に出版された日本の小説の中から良かったと思う作品に投票し、ランキングを決めた『わかイチ本 2024』が2025年3月7日(金)に公式SNS上で発表されました。
昨今はスマートフォンで情報を取得する人が多く、本を手に取らない人も増えています。この状況は学生時代の読書と密接に関係している学校図書館でも例外ではないそうです。
「本に関わる仕事をする中で、勤務する学校の児童生徒をはじめ、多くの人に読書に興味を持ってもらうことはできないか、学校図書館・公共図書館や地域書店が元気になるために何かできないかと考えて企画したのが『わかイチ本2024』です」と話すのは、県立和歌山北高等学校北校舎の学校司書であり、わかイチ本実行委員会の榎本綾子さんです。

県立和歌山北高等学校北校舎の学校図書館内。入口すぐにわかイチ本2024の展示コーナーが!
わかイチ本誕生の発端は、埼玉県の高校図書館司書が選ぶ『イチオシ本』という取り組みについて榎本さんが学んだことがきっかけです。企画趣旨を、和歌山県高等学校学校図書館研究会に所属する高等学校、特別支援学校に勤務する学校司書38人に案内したところ、今年は24人が投票しました。
わかイチ本のランキングは2023年11月~2024年10月に出版された日本の小説の中から学校司書が最大5冊まで選書して投票。上位から順位を付け、最も多い合計ポイントを獲得した小説が1位になるシステムです。
わかイチ本2024ランキングはこちら!
第1位『死んだ山田と教室』金子玲介 著/講談社第2位『spring』恩田陸 著/筑摩書房
第3位『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈 著/新潮社
第4位『地雷グリコ』青崎有吾 著/KADOKAWA
第5位『みどりいせき』大田ステファニー歓人 著/集英社
※作品詳細およびその他のランキングは、わかイチ本公式Instagramか、図書館検索サイト「カーリル」をご覧ください。カーリルではランク外のおすすめ本も紹介されています。
榎本
「わかイチ本2024で選ばれた本は、読みやすくて若い世代が主人公になっている作品が多いです。学生さんなら自分と同年代の話が多いので共感できることもあると思いますし、大人が読んでも十分楽しめます。ジャンルも幅広く、学校生活はもとより友情や、家族、スポーツものなど多彩です。学校司書さんからの投票された本のラインナップを見た時、私自身、普段は読まないジャンルの作品もたくさん選ばれていて、ある意味発見の連続でした」。
わかイチ本実行委員会は学校司書部会に所属するメンバーの中から有志9人で構成されています。文章が上手い人、校正が得意な人、デザイン力が高い人、SNSでのPRが得意な人など、メンバーそれぞれの得意分野を活かして取り組んでいます。
「わかイチ本」という名称は、南部高校の司書さんの考案。和歌山県の学校司書がイチオシの本を選ぶというコンセプトを含んだ名称で「和歌山」を PR。わかイチ本公式キャラクターの一栞(いちか)は、本屋でアルバイトをしている高校生。バイト代が入るたびに本を買って常に金欠なのだとか。キャラクターデザインは県立和歌山工業高等学校建築科(当時)の生徒が担当しました。
PRに使用するポスターやリーフレット、POPのデザインは、和歌山ということもあり、イメージカラーにみかんをイメージしたオレンジとグリーンを採用。リーフレットやPOPでは1位の作品の著者、金子玲介さんのコメントも読めます。上位ランクされた作品には学校司書のイチオシコメントも付いているので読書の参考にできます。
榎本
「読む癖がついてなければ、本ってなかなか読みません。まずは自分が気になった1冊から少しずつでもいいので読み進めて欲しいです。最後まで読み終えたという達成感をもって読書の幅を広げてもらえれば、本を読む楽しさに目覚めると思います。読書をはじめるのに年齢は関係ありません。読もうと思ったときがチャンスなので、わかイチ本を通して本っていいなと感じてもらいたいです。そして、学校司書の仕事を知ってもらえるとうれしいです」。
わかイチ本2024は公式Instagramでの発表のほか、和歌山県高等学校学校図書館研究会に所属する学校図書館、県内公共図書館、地元書店でポスター掲示やコーナー展示が行われています(展示が終了している施設もあります)。

TSUTAWAWAYガーデンパーク和歌山店内に設置されたわかイチ本コーナー
榎本
「今回の企画がきっかけになって、少しでも読書に興味を持ち、地元の書店さんで本を購入したり、図書館で本を借りたりしてほしいです。和歌山の読書を元気にしたいという思いで、今後も取り組んでいきます。わかイチ本2024のコーナー展示も受け付けていますので、ご希望される県内書店や図書館の担当者がいらっしゃれば、気軽にお問い合わせください」。
学校司書版の本屋大賞ともいうべき、わかイチ本2024。ぜひ公式Instagramや図書館検索サイト「カーリル」をチェックして、近隣の図書館や書店で作品を手に取ってみてはいかがでしょう。
わかイチ本実行委員会
わかイチ本公式Instagram
https://www.instagram.com/wakaichibook/
リーフレットは、和歌山県高等学校学校図書館研究会に所属する学校図書館、県内公共図書館、地元書店で無料配布されています
公共図書館:和歌山県立図書館、和歌山県立紀南図書館、橋本市仁昌堂図書館、かつらぎ町立図書館、紀の川市立河南図書館、岩出市立岩出図書館、海南市下津図書館、有田市図書館、有田川町地域交流センター【ALEC】 、有田川町立金屋図書館、湯浅町立図書館、御坊市立図書館、新宮市立図書館、和歌山市民図書館(ポスター・POP展示のみ)
書店:ツモリ書店、荒尾成文堂(岩出店)、TSUTAYAWAY WAYガーデンパーク和歌山店、WAY書店(岩出店、高松店、海南店、有田川店)、イオンモール和歌山 未来屋書店、宇治書店、ミヤイ書店、本町文化堂、帯伊書店、赤善書店、いろは書房、炭家書店、イハラ・ハートショップ

1位作品の紹介POPは榎本さんの手描き(県立和歌山北高等学校北校舎図書室のみ掲示)