明治42年にスイスの丸編み機を導入したことが始まりで、第一次世界大戦を契機に、全国一の丸編みメリヤス産地となった和歌山県のニット産業。そんな伝統の技と歴史を誇る地場産業として現在も業界から注目されている繊維業界と連携し、新たなアイデアを形にしたのが、和歌山市本町にある「合同会社WAKAYAMA WOODYS(ウッディーズ)」だ。
同社は2019年10月に設立。衣類や帽子などへの二次加工を行うオリジナルプリント事業や「PRINTSHOP WOODYS」の運営、自社ウェアブランド「Puff Puff Wear」の展開など、街場を活気づける面白いコトを常に企んでいる。そんな同社が2021年8月に、加工用ヘンプウェアブランド『KAZE』(ケイズ)を立ち上げた。
ヘンプとはアサ科の植物で、日本古来、生活に溶け込んでいた天然素材。吸水性・速乾性だけでなく、調温性や調湿性にも優れているので、夏は涼しく、冬は温かさを保持。生地としても他の繊維よりも丈夫で、湿り気を帯びるとさらに強度が増すという機能性あふれる素材だ。
ヘンプ生地のシャツを好んで着ていた同社代表の辻岡大樹さんは、加工用ヘンプウェアが市場に見当たらないことに着目。ヘンプ生地のウェア製作は容易に請け負ってもらえない現状もあり、「それなら自分たちで作ってしまおう」ということに。アパレルメーカーのコーディネーターや和歌山の繊維加工会社の協力を得て、加工用ヘンプウェアの製作に着手した。
「構想2年、着手に1年。一度は頓挫したのですが、ある時、地元の会社さんたちとの関係性により、ヘンプウェアをイチから作れる環境に自分たちがいることに気づいた。僕たちがクリエイティビティを大切に、良いものを作り続ける姿勢を貫いていたから、そこにたどり着いたのだと思います」と辻岡さんは当時を振り返る。
ヘンプコットンを編むのが得意なニット会社、染色会社、縫製会社から成るチームをコーディネーターが編成し、製作を開始。昨年秋には最初のサンプルが完成した。しかしサンプルを洗濯すると首回りが想定以上に伸びていたのがネックとなり、さらなる試作を続けることに。
ヘンプの良さを最大限に生かすため、ソフトでしなやかな風合いのスーピマコットンとの配合を追求した結果、ヘンプ35%、綿65%のベストバランスを見いだし、独特の表情と風合いを兼ね備えたハイクオリティな生地を作り上げた。こうして誕生した唯一無二のヘンプ生地のTシャツ「KAZE-01」は、着心地や耐久性を突き詰めた妥協のない仕上がりとなった。
「これまで作ったことがないから、正解があったわけではなかった。でもあらゆるお客さんの手に渡るので、洗濯後の縮み具合はとても気になりました。天然繊維の自然な表情を生かして仕上げているので、ヘンプの節が見られることはあるけど、着れば着るほど味が出て、自分色に染まっていく。天然素材の良さが楽しめます」と自信を見せる。
「型崩れしにくくて、着心地が良い」など、購入者の反応も上々。無地の雰囲気が気に入った人もいれば、オリジナルのプリントを施す客も。思いを込めたプリントを載せることで個性を表現できるとあって、アーティストや店舗オーナーからの注文も多い。自由度が高くて二次加工に適した『KAZE』の真骨頂だ。着心地も良く、速乾性に優れていることは、仕事着としてこの上ない味方になる。
「今後、『KAZE』を通じて、いろんな展開を考えています。商品特性を理解してくれるメーカー、企業とのパートナーシップ締結をはじめ、繊維業界などの地場産業やあらゆる分野と連携しながら面白いコトをいろいろやりたいっすね」と意気込む。
地域と、人とつながって新たなアイデアを臆せず形にしていくバイタリティの源は、何でも面白がるメンタルと地元愛。辻岡さんはこれからも「メイドイン和歌山」にこだわり、地域に新たな風を吹かせる。
「KAZE-01」は、ホワイト、ブラック、スモークグリーン、マスタード、キナリの5色展開。サイズはS~XXL。希望小売価格は税込8200円。同社が運営する「PRINTSHOP WOODYS」で購入できる。
https://kaze-hempwear.com
PRINTSHOP WOODYS
TEL.073・488・2007
https://printshop-woodys.com/